スキニー・リスターはやっぱりスキニー・リスターだぜ!
スキニー・リスターの『Shanty Punk』がリリース(2023年10月20日)されてからずっと聴いています。彼らのアルバムを聴きながら自然と口ずさむのは本当に久しぶりのような気がします。だってずっと待っていた「最高のスキニー・リスター音楽」だから。
『Shanty Punk』はスキニー・リスターの新章の幕開けかもしれないです。
スキニー・リスターはこんなバンド
スキニー・リスターは2009年にロンドンで結成されたフォークパンクバンドです。レディング、コーチェラ、グラストンベリー、フジロックなど各国のフェスに出演、世界中をツアーで飛び回る筋金入りのライブバンド。彼らのSNSではほぼ毎日ライブのアナウンスがされているほど。過去には「UKで一番忙しいバンド」なんて言われていました。
ギター、ベース、ドラムといった定番の楽器以外にマンドリンやコンサーティーナ、フィドルも使用し、アイリッシュフォークパンクの流れも汲んでいます(スキニー・リスターは海外ではフォーク、フォークパンク、インディフォークといったジャンルで呼ばれているみたいです。本メディアではイメージしやすい「アイリッシュフォークパンク」として扱わせていただきます)。
とにかくキャッチーで親しみやすく、ライブでは一緒にうたえるナンバーがたくさんあります。特にシーシャンティ(労働歌。主に船乗り、甲板作業員の歌)調の曲での大合唱は盛り上がり一体感がすごいです。高校球児たちが校歌をうたう時はこんな気持ちなのだろうと想像しています。
スキニー・リスター『Shanty Punk』
2年ぶり6枚目のアルバム。
1stアルバム『Forge & Flagon』、2ndアルバム『Down on Deptford Broadway』と並ぶ傑作、正統進化、というのが第一印象。でもスキニー・リスターというバンドに対して、根本的に偏った見かたをしていたことに気づきました。
3rdアルバム『The Devil, The Heart & The Fight』以降、UKインディロック的な傾向がどんどん強くなっていったスキニー・リスター。スカやディスコっぽい曲をやってみたりドラマティックで(彼らにしては)複雑な展開が増えたりと、バンドとしての進化、変化が大きな時期が続きました。
そういった音楽性の幅の広がりと共に過去3枚(3rd〜5th)はアイリッシュフォークパンク感が少し控えめに。スキニー・リスターはUKインディロック路線のバンドになっていくのだろう、と思っていました。が、『Shanty Punk』は全編通して完全にアイリッシュフォークパンクアルバム。そもそもアルバムタイトル(船唄パンク?)も気合が入ってますね。
ミュージシャンに「同じ音楽性でありつづけて欲しい」という想いは少なからず誰にでもあると思います。いちファンによる勝手な希望ですが、3rd以降も2ndアルバムまでの路線を続けて欲しかった。あの頃のスキニー・リスターとは変わってしまったのか、夏休み明けのクラスメイトのように……。
もちろん5thまでの3枚もめちゃくちゃかっこいいし音楽も良いいんですよ。「スキニー・リスターもやっぱりイギリスのバンドなんだなあ」と改めて思うくらい様々なUKミュージシャンの影響がうかがえます。エルヴィス・コステロやザ・ジャムの匂いがプンプンしてますね。
でも個人的には「違う、そうじゃない」でした。良い悪いではなく単純に好みの問題です。この手の音楽を現在進行形で演っている良質なバンドは貴重なので。そして今回『Shanty Punk』で原点回帰!やったぜ!
と思っていました。
よくよく『Shanty Punk』を聴くとポストパンクやニューウェーブ、その他もろもろのエッセンスが見え隠れしてます。気になって1stから全アルバムを聴き返すと、やっぱり見え隠れしてました。3rdから5thまで分かりやすく表に出ていただけで、最初からずっと色んなことを表現していたんですね。
自分の中で「アイリッシュフォークパンクバンド」というイメージが強すぎたのかもしれません。それに気づいてから3rdから5thの3枚も『Shanty Punk』とともにヘビロテになりました。そんな気づきも与えてくれる『Shanty Punk』、尊い。
また日本に来てほしい
SNSで「スキニー・リスター」や「Skinny Lister」で検索しても日本国内ではあまり話題に上がっていないです。「話題のポスト」が9年前のだったりします。しばらく来日していないということもあるし、大々的なプロモーションもないし仕方ないかもしれないですね。悲しい。
フジロックや朝霧JAMで彼らのライブを体験した人のほとんどが30代以上になっていると思います。お元気ですか? スキニー・リスターは2年に1枚くらいのペースで新譜をリリースするので毎回来日してくれるのかと思ったら、その後パッタリと来ませんでしたね。
またフジロックや朝霧ジャムで見られる日を心待ちにしていますよ。
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